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兄達とは歳が離れた末っ子の悪ガキ、でもだからこそ憧れの兄貴になろうと頑張ってみる。片や、思春期に過度の干渉と期待を背負って最後に爆発しちゃった長男。だからこそ頼りがいのある兄貴に、気兼ねない物言いをさせてもらって甘えているのでは……。琴子さんはそう言いたいのだろうなと、いろいろな話を聞かせてもらってきた紗英も思う。
「ねえ、お腹空かない。私と英児さんも挨拶でほとんど食べられなかったし。紗英ちゃんと武智さんも司会や段取り準備とか気を配ってばかりで食べていないでしょう」
そこはやっぱり良く気がついてくれるお姉さん。まさにその通りだったのだが。
「よっしゃ。じゃあ、いまから俺達だけの打ち上げ気分で、なにか食いに行こうぜ」
そう言いだした滝田社長がさっそく携帯電話片手に、何かを探している。
「近場で軽くいくか。すぐそこなら飲茶の店とピザハウスがあるけど……」
滝田社長のその問いかけが、誰にあてられているのか紗英にはわからなかった。奥さんになった琴子さん? それとも? でも何故か……。琴子さんも、武智さんも、そして滝田社長までもが紗英を見ていた。
つまり。この中で、いちばん末っ子ってこと? 急にそんな気分にさせられ。
「飲茶……がいいです」
その空気にうっかり流され、紗英一人がそう答えてしまっていた。
「じゃあ、席を押さえておくな」
そうして滝田社長がすぐさま電話で予約――。ほんとだ、琴子さんが言ったとおり。『素早い』。即決の男!
『行こうぜ』
レストランスタッフへの挨拶も済ませ、四人揃って外に出る。
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