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十代の頃からそうだった。美人とか美人じゃないとか関係なく雰囲気というか。きちんと髪を束ねているとか、きちんと黒髪を手入れしているとか。しわのない制服とか、校則はきちんと守って、同級生ともそつなくつきあえる。忘れ物もしない。ハンカチはかわいらしくて、毎日違う柄。派手さや華やかさはないが、女の子らしさは忘れない。平均的でもかわいらしさも忘れない。目立たなくても、きちんと日々を積み重ねてこなしている。そんな落ち着きある生活ぶりが、仕草や物腰、彼女たちの雰囲気を女の子らしく育んでいる。そんな『女子』の側を通るとこの匂いを持っている子が多い。
例えるとしたらなんだろうか? 甘酸っぱい……かな。未だに上手い例えが見つからない。そんな『きちんと女子』の独特な匂いを、婚約者の彼女は常に維持しているのだ。それに加えて、清々しい大人の女の匂いまで備えていて。
これが飛びつかずにいられるか? それが側をうろうろし始めたんだからたまったもんじゃない。
――『お願い。今夜はもう眠らせて』。
昨夜、彼女が困った顔で懇願した。ただ、眠る時に彼女の柔肌が直に触れていないと英児も落ち着かないだけの話……、いや、違うなと英児は自分でため息をついた。年甲斐もなくがっついてしまう。大好きな彼女と同居を始めたので、隣にいるとついつい肌を触りたくなって……。夜のベッド、その隣にいると触るだけで終わらなくなってしまうのも頻繁で。
彼女が残業続きの時は英児も遠慮する。でも、それが終わったばかりだったからついつい飛びついてしまったのだが。そうだった。疲れているんだから、眠らせてあげるべきだったのに。
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