2374人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかってるけどよー。ママのオッパイなんだよなー。すげえ張っていてでっかくかんじるけど、ふわふわな女のオッパイじゃなくて、パンパンのママオッパイなんだよなー」
そう言いながらも強く揉むんだりするので、琴子はちょっと睨んでしまう。
「もう、おしまい」
不満そうな英児の手首を掴んで、無理矢理離した。
「怒るなよ」
「怒っていません。母乳のオッパイは優しくしてくれないと、張っているから痛いの」
「悪かった。うん、悪かった」
ぷんとそっぽを向く琴子を、英児が捕まえるように背中から抱きしめてくれる。
「もうちょっと待って。セイちゃん、あと少しで母乳から離れると思うから」
「うん。楽しみに待っている」
そうしてまた目を合わせて微笑みあっていると、後部座席からジッと見つめる視線に気がつく。
娘が目覚めていた。それをふたりで気がついてハッと我に返る。
「帰るか」
「そ、そうね」
今度の娘は大人しく目覚めてくれたようで……。
再び車に乗って、小雨の海辺、国道に英児の運転する車が出て行く。
「ママ、あめ」
娘が外を見てそう言った。
「うん。雨だね。小鳥ちゃん」
息子はぐっすり。娘は車に乗っているので、もうご機嫌だった。
海沿いを走っている中、琴子はもうすぐさしかかるあるところを気にして、外に目を向ける。それは運転席にいる英児もおなじ。
――マスターのお店。もうすぐ。
私達夫妻が披露宴をした喫茶レストラン。海辺にある白い木造の小さなお店。
小雨の中、そこをさしかかると――。
「あ、いま、おっさんがいたな」
最初のコメントを投稿しよう!