貴方を独りになんかしない。②

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 そんな彼の横で、小鳥は息を潜めるようにして、黙って傍にいる。今夜、私はただ傍にいるだけ……。慰めるとか、聞き役になるとか、理解するとか、そんなんじゃない。やっぱり彼はまだ全然、小鳥が及ばない遠くにいる。でも……そっと息を潜めて、傍にいる。彼がたった一人ではないことを、少しでも感じてくれていたらそれでいいから。  だから黙って、ひたすら黙って。でも彼が突き進んでいく夜を一緒に見据える。  車は南部地方に向かっている。こんな夜遅くに、この辺りに来るのは初めてのこと。高速を降りて、瀬戸内を見渡す岬に向かうラインを走り抜け、ついに翔の車はこの半島の先端、三崎町の岬灯台まで来てしまった。  展望台の駐車場に着くと、運転席を降りた翔が、やっと笑顔を見せて伸びをした。 「あー、やっちまった」  いつもの八重歯が見えたので、小鳥もほっとして助手席を降りた。 「未成年連れ去り。親父さんに、クビにされるかな。俺」  落ち着きを取り戻した彼が、それでも笑って、ようやっとスラックスのポケットから携帯電話を取り出した。 「社長、桧垣です。……申し訳ありませんでした」  落ち着いたら落ち着いたで、今度は躊躇いもなく英児父に連絡をしたので、小鳥も緊張して硬直――。  やばい。私もやばい。こんな夜中に、よく知っているお兄さんとはいえ、大人の男性にひっついて、こんな夜中の、こんな遠くまで一緒に来てしまった。 『お前のオトシマエは……!』。つい先日も、後先考えずに起こしてしまったことで、手痛いペナルティを喰らったばかり……。  まさか。今度は……『MR2はお前にはやらねえ』とか!? 「はい、はい。承知しています。本当に、本当に、申し訳ありませんでした」
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