9.恋はお終い、小さくても愛なの①

2/11
前へ
/586ページ
次へ
 竜太が黙り、女子にしては背丈がある小鳥よりさらに上にある目線から見下ろしている。なにか言いたいことがあるのに言えずにいる目に見え、小鳥は緊張した。 「そんな日、なかっただろ。だって、お前、すげえきちんとしているもんな」 「きちんと?」  がさつでお騒がせな私のどこが? 小鳥が目を丸くしていると、竜太が少しだけ笑った。小鳥が好きだとか知られたとか、彼女と別れたせいで、親友である小鳥も巻き込みぎくしゃくしているとか。そういう諸事情を感じさせない屈託ない笑み。それを感じた小鳥は、直感的に安堵することができた。 「行動はがさつかもしれない。でも、自己管理はきめ細やか。髪はほどいたことがない、後れ毛を遊ばすとかしないで、きっちり束ねる。制服にシワはない。汚れもない。机もいつも綺麗にしているし、教室のどこかが汚れていると率先して掃除しているのはお前だし。そんなお前が傍を通り過ぎると、シャンプーなのか、洗剤なのかわからないけど、いつも清々しい匂いがする。ハンカチも小物も見かけに寄らず乙女チックだし、なにか忘れ物をして困っているところなどと見たこともない。むしろ困っている同性をしっかりサポートする姉御肌。そのうえ、字が綺麗。お前はしらないかもしれないけど。俺達、男子の間では、いちばん清潔感があって女らしいのは実は滝田っていうのは、ずいぶん前からわかってんの、感じてんの」  はあ? 目が点になった。男子からはいつも『男ぽい』とからかわられてきたし、『なんだよ』『なによ』と直ぐに喧嘩腰になるのも小鳥が女子の中ではいちばんだった。
/586ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2355人が本棚に入れています
本棚に追加