9.恋はお終い、小さくても愛なの①

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 昨夜、得たばかりの答を、小鳥ははっきり伝える。これは胸を張って。 「うん。父ちゃんと同じ、生粋の車バカ」  やっと、竜太が肩越しに振り返った。 「国大出たのに、車屋に就職して、なおかつ車バカか。敵わねえな」  致し方ない笑みを見せられる。 「土居が急に決心するほど。今日のお前、すげえ女っぽい顔しているもんな。なんかあった?」  す、鋭いなあと思いつつも。自分のことを気にかけてくれる男子は、そんな小鳥の変化も直ぐに判ってくれるんだという感動があった。  だけどなにがあったかとありのままを伝えることは、やはり心苦しい。けど……。 「あった。私と彼が、じゃなくて。彼に。私、昨夜の彼を見て、ますます好きになって困ってる」  気恥ずかしくて、たれる黒髪の中、頬が隠れるくらいにうつむいてしまった。 「もしかすると。お前の方が、よっぽど『恋愛』をして、女らしくなっているのかもな」  どんな顔だと思われたのだろう。でも、竜太がその時……やはり唇を噛みしめていた。 「だけど。まっすぐで迷いがなくて、ほんと、俺らの滝田らしくって。それはそれでいいなって思う。きっと土居も」  そして彼が最後に小さく呟いた。また背を向けたまま。 「がんばれよ。じゃあな」 「あ、ありがとう」  彼氏ができるだけが、恋愛じゃない。ずっとその人だけの片思い。それを貫いている間も『恋愛』。  そうだね。ありがとう。私は私のまま続けていくよ。  でも。心の中で一度だけ小鳥は呟く。『ごめんね』と。    ―◆・◆・◆・◆・◆―  
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