9.恋はお終い、小さくても愛なの①

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 まだ少ししか会ったことがないだろう彼女が、英児父のことを親子でそう感じたと言ってくれている……。  確かに。英児父はそういう人間だと小鳥も感じている。子供の時から父の一声で沢山の人が龍星轟を中心にして集まってくる。お客さんだけじゃない。英児父の学生時代の友人や店を通して顧客として出会ったはずなのに、親しい友人になってたり。誰もが英児父を慕う笑顔を小鳥はずっと見てきた。  琴子母もそう『元ヤンで最初は怖かったけど、話してみたらとっても素敵な人だと直ぐにわかった。今までであった誰よりも、お父さんは心がおっきい人』と――。  誰かの幸せをどうしたら幸せになれるか、当たり前のように考えてしまう人よ。それがお父さんの本能、だからお父さんに触れた人も本能でわかっちゃうの。お父さんといる安心感を――。 「それなら。うん……父もお騒がせな時があるんだけど、安心した。そちらのお父様とお母様にはとっても嫌な思いさせたんじゃないかと気にしていたんだ」 「いいえ、むしろ……」  優しい笑顔を見せてくれて彼女が小鳥から目を逸らした。小鳥も首を傾げどうしたのかと気になったのだが。 「むしろ。私……ずっと……ドキドキしていたんです。だって私みたいな目立たない女子には、あんなびっくりするような出来事なんて滅多になくて」  え。怪我をするようなアクシデントに出会ったのに? あれからドキドキ? 小鳥は眉をひそめた。だが彼女がまた笑ってくれ、眼鏡の奥から煌めく眼差しを真っ直ぐ向けてきた。 「滝田先輩のように誰もが知っている先輩と、こうしてお話ができるチャンスが巡ってきて」
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