9.恋はお終い、小さくても愛なの①

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「え、先輩が……ですか?」  再度小鳥は、小さく『そう』と頷いた。そうしたら彼女が頭を上げて、小鳥に飛びついてきた。 「先輩っ。お願いです!」  え。急になになに? 戸惑う小鳥にさらに彼女が意気込んで言い放つ。 「私、手芸部なんです。部員がいなくて困っているんですけど。先輩、形だけでもいいから入ってくれませんか!」  うわ。急に積極的な彼女になって後ずさったが、眼鏡の奥の瞳が真剣そのものだった。 「え、だって。卒業しちゃうし、」 「先輩の自動車愛好会も、ちょっと覗いてみたかったんです。でも、私あんまり車に詳しくないし、三年生が多いし……」 「えー、そんなことないよ。うちらも卒業しちゃう三年生ばかりだから、存続を気にしていたんだよね。二年生大歓迎だよ。詳しくないならなおさら大歓迎!」  そこで二人で顔を見合わせた。 「……今度、じゃあ、手芸部。のぞいてみようかな」 「ほんとですか。滝田先輩が来てくれたら、他の女の子も喜びます」  実は。最初に入ってみたいと思っていたのが手芸部だった――というのは内緒の話。柄じゃないと言われそうで避けていたことと、家に帰れば相手をしてくれる祖母がいるので手芸はオフタイムと決めつけていた。 「えー、滝田先輩。これだけ作れたら他にも作っていそう」 「ええっと、実は……。いま、うちのお祖母ちゃんと夏向けのお花のレエス編みをしていて」  また彼女が目を丸くして『えー』と驚いた。 「手芸は、小さい頃からお祖母ちゃんが全部教えてくれて、家に帰ったらよく二人でやっているんだ」  いまは、小さな丸いテーブルクロスを編んでいるよと教えると、彼女の目が輝きだした。
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