恋はお終い、小さくても愛なの②

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 父が妙にスミレに照れているのは何故かわかって、小鳥は密かに鼻白む。ああ、琴子母と同じ匂いとか言っていたから、スミレからまた『女』を感じているのかと。 「うわー、香世ちゃんにも似てる気がする」  カヨって誰!? と、小鳥が思った時には、父が手元に積んでいた自動車雑誌で武智専務の頭を『黙れ』とはたき、武ちゃんは面白そうに笑っているだけ。当然、スミレはいい歳したおじさん二人の子供じみたやり取りに唖然としている。 「あー、ええっと、菫さん。ゆっくりしていってくれな」 「ごゆっくり~」  事務所の親父さん達への挨拶も終え、小鳥はそのまま一階の小さな一角に住まう祖母宅の玄関へ。  杖をついた白髪の鈴子祖母が笑顔で出迎えてくれる。 「小鳥ちゃんのお友達? えっとカリンちゃんだったかしら?」 「ううん。彼女は二年生でスミレちゃん」  お祖母ちゃんがじっと耳を傾け。 「え、カリンちゃんじゃなくて、スミレちゃんだったの? お祖母ちゃんずっと勘違いしていたのかしら!?」 「今日は花梨ちゃんじゃなくて、スミレちゃん。新しいお友達」 「まあ、そうなの! それはそれは。どうぞどうぞ」  数年前から耳が遠くなってきて、こうして時々会話が噛み合わないけれど、お祖母ちゃんは元気。会えなかった大内の祖父が亡くなった後、鈴子祖母も倒れたと聞いたことがある。一命は取り留めたが、足と手に後遺症が残った。英児父が琴子母と出会った時、琴子母は鈴子祖母を甲斐甲斐しく介助する生活をしていたと聞いている。  そんなお祖母ちゃんは『あの時に助かったせいか、逆に元気で長生きしちゃって』とよく言っている。
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