恋はお終い、小さくても愛なの②

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 そしてスミレは、恐る恐る、茶髪の無愛想な聖児から差し出されているペンケースを受け取った。 「いいえ。こちらの皆さんにはよくして頂いたから、もう本当にこれ以上は……かえって申し訳ないです。ですけど、弟さんまで……。本当にこちらの皆さんって、気持ちがひとつなんですね」  下級生の弟にまで、彼女は丁寧な受け答えで丁寧にお辞儀を返してくれる。そんな彼女を、聖児がじっと見ている。 「おい、小鳥。GTR、持ってきたぞ」  父に呼ばれ、小鳥はスミレを連れて外に出る。  スミレが助手席に、小鳥は後部座席に乗り込み、エンジンを唸らせる父の運転で彼女を学校まで送った。    英児父と帰宅して、二階自宅に戻るなり聖児に聞かれた。    姉ちゃん、あの先輩、どこのクラス。    聞きづらそうにしているけど、ストレートに尋ねてくる。遠回りは好きじゃない聖児らしいと小鳥は思いながら、『その予感』などなかった顔をすることにした。  スミレの名前とクラス、そしてどんな家庭か小鳥は教えてあげた。    その数日後だった。聖児が急に髪の色を元の黒髪に戻したのは――。    ―◆・◆・◆・◆・◆―    聖児が黒髪に染めた頃。スミレと親しくなっても、竜太との間に互いの気持ちに折り合いがついても――。  花梨ちゃんは戻ってこない。  そして。龍星轟に翔の姿もなかった。 「専務、おはようございます」  今日も学校へ出かける時、開いているドアから見える事務所へと挨拶をしたのだが、そこに武ちゃんはいても翔兄はいなかった。
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