10.愛車は青い『エンゼル』

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「そうだよ。助手席に乗せて。他の車数台とね。ゼットならスミレちゃんも乗せられる」 「スミレちゃんもだと? あの車のサークルで行くのかっ」 「うん。国大のサークルと、瀬戸大橋まで合同ドライブ」  小鳥が通う大学は、琴子母も通った女子大。そこで小鳥は今度は人が集まりやすいようにと『ドライブサークル』というものを作った。女子大なので『共学他校と交流あります』と宣伝すると、割と人が集まった。他の大学に通う同窓生を通じて、車好きの人を紹介してもらったり、ドライブイベントを企画してくれるサークルと提携したり。今日は、翔が卒業した国立大生と共同の『ドライブイベント』。  いちいちそこまで細かい予定はもう親には告げない。だけど、『男も一緒のおでかけ』と気がついた英児父の顔色が変わる。 「そいつら、大丈夫なんだろうな」 「大丈夫だよ。何度も一緒に遠出しているし」 『何度もだとぉー』。また英児父が顔をしかめる。ああ、面倒くさいなあ……と小鳥はゲンナリ。もう子供じゃないよと言いたいが、ハタチになるまではどうもその文句は言っても皆無のようだから黙って我慢している。 「社長。エンジンの組み込み終わったので、チェックしてくれますか」  助け船が来た! 小鳥は目を輝かせる。  整備手袋を外しながら、颯爽とピットから出てきた翔がこちらにやってくる。  そして、翔も父娘の不穏な空気に気がついたよう。だがそんな敏感な翔を見つけて、小鳥より父親が彼を手元に引き寄せた。 「翔! 小鳥のヤツ、またお前の大学の男と出かけるっていうんだよ」  だけどそれを耳にして、翔兄は『やれやれ』と言わんばかりの小さな溜め息をついたのがわかった。
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