10.愛車は青い『エンゼル』

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 ずっとこんな衝動と小鳥は闘っている。なのに翔兄は……。 「今日、高松に行くなら帰りは夕方以降だな。そうなると、小鳥も疲れているだろうから今夜は無理か」 「うん。明日はバイトだから。今夜はでかけない」 「じゃあ。俺の休日前夜。仕事が終わった頃、ダム湖で」  なにげなくさらっと伝えると、翔兄はすぐさま小鳥から離れピットへと戻ってしまった。  夜、落ち合う約束。だからって、男と女として約束しているわけじゃない。  ただ一緒に走っているだけ――。  MR2とスープラを並べてどこまでも走る。  そんな、ありきたりな『走り屋仲間』。  時には互いの車に乗って一緒に。時には翔兄が英児父のように運転を見てくれたり。もし、小鳥が助手席に乗ってでかけるというならこの時、この人の運転の時。そしてあとは父が運転する時だけ。  大学生になってからずっと。翔兄が夜を一緒にと誘ってくれるようになった。夜は彼と一緒にいることがほとんど。  それは嬉しく。そして、楽しくて。愛しい人との二人だけの時間。でも、もどかしい日々。
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