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ずっとこんな衝動と小鳥は闘っている。なのに翔兄は……。
「今日、高松に行くなら帰りは夕方以降だな。そうなると、小鳥も疲れているだろうから今夜は無理か」
「うん。明日はバイトだから。今夜はでかけない」
「じゃあ。俺の休日前夜。仕事が終わった頃、ダム湖で」
なにげなくさらっと伝えると、翔兄はすぐさま小鳥から離れピットへと戻ってしまった。
夜、落ち合う約束。だからって、男と女として約束しているわけじゃない。
ただ一緒に走っているだけ――。
MR2とスープラを並べてどこまでも走る。
そんな、ありきたりな『走り屋仲間』。
時には互いの車に乗って一緒に。時には翔兄が英児父のように運転を見てくれたり。もし、小鳥が助手席に乗ってでかけるというならこの時、この人の運転の時。そしてあとは父が運転する時だけ。
大学生になってからずっと。翔兄が夜を一緒にと誘ってくれるようになった。夜は彼と一緒にいることがほとんど。
それは嬉しく。そして、楽しくて。愛しい人との二人だけの時間。でも、もどかしい日々。
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