11.好きって伝える! 伝えられる??

5/16
前へ
/586ページ
次へ
 なのに小鳥の胸が勝手にドキドキと舞い上がる。彼が追いかけてきてくれた。  少しだけ車窓を空けると、聞き慣れたエンジン音がどんどんこちらに近づいている。  それでも小鳥はスピードを落とさなかった。私は私のスピードで、あくまでも自分のために前に行く。そして今日は一人で行くと決めてきたから。  前を見据え、小鳥もハンドルをぎゅっと握り直す。バタバタと気流が入り込んでくるウィンドウを閉めると、小鳥は制御していたアクセルをグッと踏み込む。  距離を縮めていたスープラを振り切るように、青いMR2が加速する。また引き離され、彼の車がバックミラーから消えた。  ただ見据え、小鳥はハンドルを握り、アクセルを強く踏む。暗い運転席に浮かび上がるメーター。赤い針が徐々に右に傾いていく。  いつも前を走っていたのは、歩いていたのは、彼の方。小鳥はいつだって追いかけてきた。  でも今夜は違う。彼が小鳥を追いかけている。そして小鳥は引き離そうとする。  わかっている。これは本意ではない。でも、私の願い。『来てよ、追いついてよ。そして、どうして追いかけてきたのか教えて』  ――私を捕まえて!  窓を閉めていても、その音が小鳥の背後に迫ってきた。  もうバックミラーに映ったかと思うと、あっという間にMR2の背後に追いついた。  車線変更をした白いスープラが、青いMR2と並ぶ。運転中に会話は交わせない。だけど、いつも二台で走りに出かけた時、小鳥と翔は運転席からの目線で会話をした。  その目が少し怒っていることに小鳥は気がついた。『俺に何も言わないで消えた』とでも思ってくれているのだろうか?
/586ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2356人が本棚に入れています
本棚に追加