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それはそれで、探しに来てくれて嬉しい反面。『なんでもない仲なのに、なんでお兄ちゃんにいちいち行き先を報告しなくちゃいけないの』という憤りもある複雑さが入り交じる。
そんな小鳥の苛みなど知ってるのか知らないのか。もうすぐインターチェンジだという標識が近づいてくるところで、翔兄はいつもの横顔でそれを指さした。
つまり『ここで降りるぞ』という指示? それとも『ここで降りるんだろ。俺も降りる』と……判ってくれているのか。
隣にピタリと並ぶスープラは、小鳥が選んだスピードにきっりち合わせ寄り添い走っている。高速の直線もゆるやかなカーブもそっくりそのまま、真横に繋がれているように並んで走る。
これでも小鳥はけっこう集中して前を見て走っているつもりなのに、ふと横目で見るスープラの運転席にいる男は、これまたいつも通りの余裕の笑みを浮かべているのを見てしまう。
なんでも余裕。まだ未成熟な小鳥より、なんでも余裕。そんなちょっと憎たらしい横顔。……なのに。同じ前を見て、同じスピードで、ぴったり隣に寄り添って、どこへ行こうかもちゃんと判ってくれていて、どこまでも、どんな時も、彼は隣にいた。
これって。もしかして、彼の答え? そう思っても良い? そんなふうにぼんやりとしか感じられないことが、もう限界。だから『決意』しようと思う。ハタチの前、今夜、岬で。
インターチェンジが視界に現れ、二人揃ってスピードを落とす。先頭を行くのは白いスープラ。俺が先導するとばかりに、彼が先に走ってしまう。
高速を降りて一般道に出ても、先ゆく彼は小鳥が思い描いたとおりのルートを走り始めている。彼が選んだそのコース、行く先はもうひとつだけだった。
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