12.ハタチになったら、愛してくれるの?

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「……え、お、お兄ちゃん。それって」  翔が住んでいるマンションの鍵と判り、小鳥は驚く。  つまり『合い鍵』! 『俺の部屋に、いつ来てもいい』という、彼からの『気持ち』。そしてその気持ちがどういうものであるのか判ってしまっても、小鳥はまだ信じられない! 「来週。小鳥がハタチになったら渡すつもりで、こうして準備して持っていたわけだけどな。キーホルダーもこれだと思うものを見つけるのに、けっこう時間かかった」 『小鳥』でも『エンゼル』でもなくて『カモメ』。それが彼が選んでくれた『ハタチの小鳥』ということ? しかもこれをハタチになったら渡すんだと、ずっとずっと考えて準備してくれていただなんて。小鳥の胸から何かが溢れていく。 「う、嘘。だって……私、お兄ちゃんから見たら、子供、でしょ……」  涙が滲んでいた。小さな女の子だった自分はまだランドセルを背負っていたし、彼はもう社会人で、背が高いお兄さんとしてもうそこにいた。  十歳も先を行くお兄さん。どんなに急いでも追いつかない。いつまでも上司の娘さんとして気遣われているだけで……。 「子供って。だからって、いつまでも子供じゃないだろ。確かにランドセルを背負って『ただいま』と龍星轟に帰ってくる小鳥は子供だったし、中学、高校の制服姿の小鳥も子供だった。でもいま、俺の隣にいるのは確かにあの女の子なんだけど……」  ハンドルを握ったまま灯台だけを見ていた彼が、やっと助手席にいる小鳥を静かに見た。カモメの鍵を握りしめて、涙をこぼしている小鳥をじっと暗闇の中、見つめてくれている。
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