12.ハタチになったら、愛してくれるの?

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「知ってるよ。二年前、この岬で落ち込む翔兄を見て、もっと好きになった。真面目で、どんなことにも真剣で、実直。だからカーブのように上手く曲がれなくて、直進しちゃって壁にぶつかっちゃう。頭良く要領よく余裕でこなしているわけじゃない。だから、お兄ちゃんも完璧じゃないんだって知ることが出来た。がっかりなんてしなかった。私、あの時も翔兄を抱きしめたかった」  やっと素直に口に出来た時、小鳥ももう、彼の目を真っ直ぐに見つめ返していた。 「あの時、初めて思った。どんな時も、翔兄のそばにいたい。隣にいたい。アナタが痛いと思ったこと、一緒に痛いと思いたい。アナタが泣きたい時、一緒に泣きたいって。それほど、好き。ずっとずっと好き。前よりもっと好き。今も好き、翔兄が好き。大好き」  溢れる想いを、そのまま口にした。  彼の顔がちょっと困っているように見えた。呆れているようにも見える。やっぱり、こんなストレートはだめ? 重すぎる?   だけど次には彼が嬉しそうに微笑んでくれた。にっこりと、あの八重歯の笑みを見せてくれる。 「小鳥。ありがとう」  小鳥の頬に触れている手の指先が唇に触れた。その指が軽く小鳥の顎を、彼の方へと誘っている。それが何を求められているのかわかって……、ついに小鳥は自ら目を閉じて答える。  まつげを震わせながら待っていると、唇に温かく柔らかい感触がすぐに落ちてきた。優しく重ねてくれるだけの、そして、それは小鳥にとっては初めての口づけ。  涙が出てしまった。あまりにも感極まって……。  それだけで翔兄の唇は離れた。涙を流している小鳥を見て、やっぱり少し狼狽えている。 「大丈夫か。厭だったか」
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