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「急に女らしくなって。それになんだよ。そんな……いい身体になりやがって。だからこの前から言っているだろ。自覚してくれって。いつまでも『私は女らしくないから』と思いこんで、女らしい格好をしていく時も無防備に出かけていって。その無防備さに、男が吸い寄せられているって気がつけよっ」
小鳥は唖然とした。あのお兄ちゃんが、駄々をこねるみたいに文句を言っている。すごく困った顔で。こんなお兄ちゃんも初めて?
「そんなに、無防備かな。だってほんとに私、女らしくなくって」
「ったく。これだもんな。親父さんがハラハラしている気持ち、俺すげえわかるんだよな。安心しろ。ちゃんと色香もあるから。オカミさん並の『いいとこのお嬢さんの匂い』しているから。しかも……予想はしていたけど……」
そこで彼が何かを小さく呟いた。聞こえなくて小鳥は聞き返したが、聞こえない。再度、聞き返してやっと聞こえたのが。『お前の胸、思った以上にデカイ』だった。
「だからっ。ハタチになったら、すぐに捕まえないと、いつ他の男に捕まえられるかわからないと……思っていたんだよっ」
そんな、拗ねたようなお兄ちゃんの横顔も初めて……。小鳥はついに笑って、運転席にいる彼に抱きついていた。
「嬉しい。お兄ちゃんに、予約されちゃった」
「……ほんとはハタチまで、絶対に手を出さないと決めていたのに。ちくしょう」
「別にいいじゃん……。だって。私、友達の中でも、遅いんだよ」
お兄ちゃんだけと思って大事に取っておいたのに。だから今度は小鳥が小さく呟く。
「いまからだって。全然、構わないんだけど」
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