12.ハタチになったら、愛してくれるの?

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 今すぐ。お兄ちゃんと一緒になってもいい。もう身体は熱く燃えてしまっている。このままどんなに痛くても貫かれてしまっていいと……。 「だめだ。今夜はだめ」  そこはきちんとしている彼らしく、厳しい顔つきに。そのまま抱きついている小鳥を助手席へと押しのけた。  そしてそこで彼が、どれだけの決意を持っているかを初めて口にした。 「小鳥のことは今すぐ欲しい。でも……。ハタチまでは、親父さんへの義理を通させてくれ」  その言葉に、今夜、彼に愛されているとわかった感動以上に、胸を貫かれた。  彼は、翔は、小鳥のことだけではない、小鳥の家族のこともちゃんと考えてくれている。小鳥の周りにある『大事』は、俺にとっても『大事』。それをちゃんと大切にしてくれていた……。  上司への義理。上司が大事にしている娘、お嬢さんだから、ハタチまでは絶対に手を出さない。手を出さないと決めていたから、気持ちも表に出せなかった。その間、徐々に大人になりつつある小鳥が同世代の男に捕まえられないか、ハラハラしていた。それが彼の二年だったんだと、小鳥はやっと知る。  だから中途半端な男の気持ちしか見せられなくても、常に『今夜、一緒に走ろう』と出来る限り手元に引き寄せ、でも留め金が外れないよう『父親の部下、俺はお兄ちゃんでなくてはならない』という、望まない気持ちとのバランスを保っていた。  だけど、今夜。ついに彼も……。そして小鳥も……。 「じゃあ、ハタチになったら……愛してくれるの」  ハンドルを握ったまま、灯台の光を見据えた彼がそっと微笑む。 「待っていたのは俺だって。まだわかっていないな。小鳥は」  その鍵を持って、俺のところにおいで。いつでも待っている。
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