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「べ、別に。バイト代から買ったんだよ」
嘘だった。小鳥自身、自ら買ったアクセサリーはシンプルなピアスぐらいしかない。
そして武ちゃんも『へえ』と意味深な微笑みを見せる。
「じゃあ。おじさんから言っちゃおうかな」
やばい。このおじさんの観察力には、誰も敵わないことを小鳥は良くわかっている。
「翔の首にも、似たよーな指輪がちょっと前からぶら下がっているんだよねえ……」
あーん。やっぱり武ちゃんの目は誤魔化せなかった! 小鳥はついに降参する。
「ハタチのお祝いに。お兄ちゃんから……」
「お祝いに? ふうん、指輪だけじゃなく、お祝いに女にもなっちゃったってわけ。ついに」
「お、お父さんも、じゃあ、知っているってコト?」
そこまで見抜かれたので、小鳥は英児父も気がついているのかと焦った。
『意地悪』の意味を、小鳥もやっと知る。エンゼルに乗って夜な夜などこかに出かけては、帰りが遅い。イコール、『男と一緒』。しかも『俺の部下、かもしれない』。そう思って、小鳥が出かけにくくなるよう、車を出せないようにしているってこと?
だが、武ちゃんが首を振る。
「いやいや。相手が翔だとは……はっきりとは確信していないみたいだね。でも小鳥が『誰かに夢中で、指輪をしている』ことは気がついている。翔だと疑っているけど、タキさんは翔が指輪を身につけていることも気がついていないし、そこは翔の方が上手だね。部下としての顔をきっちり守っているから、親父さんも信頼している部下だけに、余計な詮索をして厭な親父になりたくないと……そんなところ?」
「少しずつ自然に知ってもらえればいいよね……って、彼と……」
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