12.ハタチになったら、愛してくれるの?

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 別に英児父を騙しているつもりはない。だけど、まだつきあい始めたばかりなのに『今日から二人でつきあいます』なんていちいち報告するのも変――。ということで、いつのまにか気がつくような自然な形でいいのではということにしていた。  そして、そこは武智専務の方が笑って受け入れてくれる。 「うん。おじさんも、それでいいと思っている。まあ、でも。龍星轟の空気が変なことにならないよう、ちょっとそこの事実は押さえておきたかったんだよね。わかった。親父さんのことは心配しなくていいよ。おじさんが、父ちゃんと翔のことは見ておくから」 「あ、ありがとう。おじちゃん。お願いします」  きちんと頭を下げて御礼をいうと、そんな馴染みのおじさんが、感慨深げに眼鏡の顔で小鳥を見つめている。 「……長かったな、小鳥」  誰もが知っていただろう小鳥の長い初恋。それが叶った。それをそっと祝福してくれている。 「うん」  照れくさくてそれ以上は何も言えず、小鳥はさっとフェアレディZのキーを握った。 「アルバイト、行ってきます」 「いってらっしゃい」  眼鏡のおじさんに笑顔で見送ってもらい、母の車のキーを片手に事務所を出た時だった。  小鳥が出てくるのを待っていたかのように、青いMR2がさっと滑り込んできた。キッと停車したその運転席には、英児父。  父親がふてくされた顔で、運転席から降りてきた。 「車、整えておいた」 「あ、ありがとう」 「バイトだよな」 「そうだよ」  本当にバイトへ行く。のだが、英児父がじいっと小鳥を見ている。小鳥の目の奥から何かを探っている。  バイトの後、どこに行くつもりだ。そんな問いかけが聞こえてしまう。
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