12.ハタチになったら、愛してくれるの?

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 赤裸々に報告できないことだけど。そこはもう大人の女のデリケートなことだから、いまはそっとしておいて。言葉に出来なくても、小鳥は目で伝えた。  すると、英児父がヤンキー座りぽいその姿のまま、ふっとひと息。だけどまたグッと小鳥を下から睨んできた。 「男に言っておけ。娘の男だって認める時は、娘が幸せだって『親父の俺が』確信した時だってな」 「と、父ちゃん」 「お前が幸せだって言っても、まだ認めねえ。確かに娘は幸せだ。俺がそう思えた時がその時だ」  英児父らしくて。小鳥は泣きそうになった。 「……わかった。私が認めた男の人が……現れたら……、その時、その人にそう言っておくね」  いまその人がいるとは、小鳥はまだ白状しなかった。  でもそれが翔であることは。おそらく、こんな会話をしているけれど、もう父も判っているのだろう。 「行ってこい。お前がどこまでも走れるようにしておいたからよ」  先日、整備したばかりのMR2を今日もまた整備していたのは何故なのか。小鳥も察した。それも父の儀式なのだろう。  これから自分一人で飛んでいく我が子。そんな子離れをするための言い聞かせをしながら、どこも悪くない娘の愛車を手入れしてくれていのだろう……。  小鳥は再度、運転席のドアを閉め、ハンドルを握る。 「お父さん、行ってきます」 「おう。きばって行ってこいや」  バイトも、恋も、そして小鳥のこれからのなにもかも。父はここから小鳥を飛ばしてくれる。  MR2のアクセルを踏み込み、エンジンを高らかに響かせると、父も満足そうに見送ってくれる。    俺の小鳥。  どこまでも飛んでいけるエンゼルにしておいたからよ。  もうどこでも飛んでいきな。  
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