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琴子は眠ったままバスタブのへりに頭をもたれて眠っていた。溺れてはいなかったが、身体が滑ったら、そのまま湯船に沈むような体勢!
彼女の腕をひっぱりあげる。湯の中で、彼女の大きなバストがふわりと揺れたが、英児は目もくれずに彼女の身体を抱き起こす。
「え?」
身体が動いたせいか、やっと琴子が英児の腕の中で目を覚ました。英児は湯で濡れた妻の裸体をぎゅっと抱きしめている状態。彼女が英児の胸元できょとんとしている。
「この、バカヤロウ! もうすぐで溺れるところだったんだぞ!」
「え、そ、そうなの?」
「おまえ、眠っていただろ」
やっと自分の現状況を把握したのか、琴子が申し訳なさそうに英児を見上げた。
「すごく気持ちが良くて……、二日ぶりのお風呂だったからつい……」
濡れた身体で彼女からもぎゅっと英児に抱きついてきた。
うっ。それは反則だろう。本当は毎日、おまえの肌に触って眠りたいのに。いまは忙しそうだから、眠らせてやろうと、俺は俺は毎晩我慢しているんだ――と、英児は心の中でなんとか自制を努めるのに。
「英児さん。気がついてくれて、ありがとう」
裸の彼女がさらに英児に抱きついてきて、しかも英児の口元にチュッと御礼のキスをしてくれた。
ああ、もうダメだと英児は真っ白になる。
濡れた裸体の琴子を抱きしめたまま、英児はあろうことか着衣のままざぶっとバスタブに片足を突っ込んでいた。
「英児さん?」
「おまえな、ほんっと悪いヤツだな」
「え?」
いつもなら、自分が着ている服がどんなに濡れたって、思いたったその場所で惚れた女の裸体に一直線。だが、英児は片足を突っ込んだまま、なんとか思い止まる。ぐっと思い止まる。
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