◆ 車屋さんバレンタイン

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「はあ? 趣味とかで喜ぶわけじゃねえよ。まるでその子そのものみたいなのが嬉しいんだよ。いかにも『琴子!』って感じじゃねえかよーー! これ俺大事にするからよ。スカイラインにずっと乗せておくな!」  俺の憧れ女子チョコレート。やっともらえた――と感激していたら、琴子もやっと笑ってくれている。 「ごめんね、私、的を外しちゃっていたみたいで」 「そんなことねえよ。よしタイヤとホイールを履かせたらよ、今夜はスカイラインでどこか行こうぜ」 「ほんと、ドライブに連れて行ってくれるの?」 「明日は休みなんだろ」 「うん」  どこがいいかと聞くと、琴子は迷わずに『長浜』と答える。俺達が恋人になった時の海岸線。    夜の海辺で、ハートの銀缶を開けてチョコレートを一粒。琴子がつまんで、英児に食べさせてくれる。  入り江には冬の月。波間に輝く光の道が、ふたりがいるスカイラインまでのびている。  普段は甘ったるくて『食えるかこんなもの』と思っている英児も、今夜は極上のキスの媚薬にしてしまう。  それからスカイラインの助手席に銀のハートが同乗するように。中にはライターを入れているから、車が跳ねるとカランと音が鳴る。  走り屋の旦那よりかっ飛ばす奥さんがいるから、侮ってはいけない『車屋さんのバレンタイン』。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 【参照】 ワイルドで行こう 本編+続編+番外編 時系列 *続編:ワイルドBerry's  24話 あの日の、潮風ベール  (英児と琴子、漁村で結婚披露宴) ↓ *ワイルド×マイルド小話 『車屋さんバレンタイン』  (結婚後、一ヶ月後ぐらいの二月中旬) ↓ *《Born to Be Wild;ワイルドで行こう》 琴子視点(閑話)  (結婚、半年後。琴子6月の誕生日、フェラーリに乗る) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※長い続編、ここまでお疲れ様でした。  明日の1話アップで完結です
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