◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

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◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

 はあ、暑いなあ。やっぱりこの時期にキッチンの火の前に立つのはつらい。  土曜日の午後、琴子は従業員のお昼ご飯を作っているところ。  矢野専務のご要望で、今日は天ぷら蕎麦。天ぷらを揚げる暑さと蕎麦を茹でる暑さに見まわれていた。  おう! 琴子、おめえの昼飯、やっぱ元気出るわ。うまかったーーーー!  ものすごく喜んでくれるので、それを見てしまうと琴子も『また作ります』と嬉しくなってしまうから続けている。  そんなランチタイムもなんとか無事に終了。最後にランチタイムにはいった英児からも『いつも有り難うな。助かるよ』と昼間なのに熱烈なキスをもらってしまった。  従業員のランチタイムもシフトでひとまわり落ち着いた頃。琴子も冷たいコーヒーを入れて一休み。  玄関のチャイムが鳴った。夫の英児なら自宅だから勝手に入ってくる。誰かしら――と、琴子はエプロン姿のままインターホンに出てみる。 『こんにちはー。愛子です』  英児実家、長兄のお嫁さん。お義姉さんだった。 「いらっしゃいませ。愛子お姉さん」 「あっついねー。突然、ごめんなさいね」  連絡もなしに来ることは珍しいことだった。 「下のピットで英ちゃんに声を掛けたんだけれど、手が離せないから二階で涼んでいて、琴子もいるよ――と言ってくれたんだけど。あがってもいいかな」 「大丈夫ですよ。暑かったでしょう。いま、私も冷たいコーヒーを飲んでいたんです。お姉さんにもいれますね。アイスティーもありますけれど」 「ほんとう? じゃあ、アイスティーもらおうかな。この前、琴子さんがご馳走してくれたのがおいしかったから」
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