◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

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 初めてのご挨拶の訪問の時、ほんとうになにも言われなかった。だけれど、二人の父子はほぼ無言。会話がなかった。お義兄さんとお義姉さんが笑顔で話を取り持ってくれるというかんじで。ただ、和やかな空気半分、父子の冷めた空気半分というのは否めなかった。  帰る時もこの愛子お義姉さんが『喧嘩がはじまらなかっただけで大成功よ』とホッとした顔をしたほど。  今回もそうあれば、それでよしぐらいに琴子も考えている。  英児がまた実家に帰省する時期が迫ってきて、それで心配して来てくれたのかな――と、琴子は義姉の訪問の目的に首を傾げる。 「そうそう。これこれ、もうこの家に引き取ってもらおうと思ってね。持ってきたのよ」  来た時から愛子が片手に持っていた紙袋。それがダイニングテーブルの上に置かれた。 「英ちゃんが帰ってくるから、お盆の掃除をしていたら出てきたんだよね、これ」 『これ』と置かれたものは、古びたビニールの袋。 「まあ、琴子さんは知っているから驚かないよね」  愛子が構わずに袋を開け、その中から出したものを琴子に見せた。  知っているから驚かない。それでも琴子は驚いた。 「え、英児さんの写真ですか」 「そう。英ちゃん、アルバムに貼らないでこうして束にして保管していたみたいなんだよね。十代と二十代の写真がわんさかと出てきたのよ」  リーゼントぽい髪型に、時にはオールバック。茶髪や剃り込みに赤い色。クラシックヤンキーといわれる、学ラン姿の英児の姿。  結婚前に数枚『招待する俺のダチ』と友人達の写真を見せるために、ヤンキーだったころのものは見せてもらってはいたが……。  それが見事に何枚もあると、圧巻のひとこと。
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