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本当に弟のような顔をしていた。この歳が離れたお義姉さんは、英児にとってはきっと大人のお姉さんで、実家ではお母さんの代わりだったかもしれないと琴子は初めて感じた。
愛子の車を見送ると、作業着姿の英児が溜め息をついた。
「実家に行く前に気を付けることがあると来てくれていたんだ。親父が俺のなにが気にくわないとか、こういうの心配しているとか前もって教えてくれてさ。だからなにか言づてがあったのかと思ったのに……」
「なにもなかったみたいよ」
「琴子に頼んだってなんだ?」
「お嫁さん同士のヒミツ」
はあ? なんだよ、なんだよ――と、まとわりついてきそうになったけれど、仕事中の社長さんなので琴子はするっとなんとかかわして二階に戻った。
愛子義姉が置いていった若い頃の英児の写真。それをもう一度、ゆっくり眺める。
「いまの私なら、絶対にひと目ぼれ」
いまよりずっと鋭くて生意気そうな眼差しに、かっこつけ。でもこの頃からなんとなく龍っぽいセクシーさが備わっていたんだなあと、琴子はしばらくしみじみ。
―◆・◆・◆・◆・◆―
空に少しだけ茜が残っている夏の夜。お店を閉めた英児が二階自宅に帰ってくる。
「今日も暑かったね。ご飯の前にシャワーでも浴びてくる?」
「おう、そうだな……って、おい、なんだこれ!?」
ダイニングテーブルに広げてみていた写真を、ついに本人が見つけてしまう。
「ななな、なんで、お、俺の、俺の、こんな写真がここに!」
つつみかくさず披露されてしまった学生時代のヤンキー姿の数々。その写真を自分で手にとって眺めている英児がぶるぶると震えている。
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