◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

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 でも。琴子にとって英児の過去で『ヤンキーだった』というのはけっこう重要な過去。でも琴子はまったく触れられない。それが時々口惜しい。そしてそれを知っている女性が羨ましい。 「……ごめんなさい。なんでもないの。ただ、英児さんが若い時もかっこよくて素敵だったから……。この時も一緒に過ごしたかったと思っただけ」  どうしてか感情的になってごめんなさい。  自分もどうかしていたとしょんぼりと琴子はうつむいて、いつもの自分に戻ろうとした。 「なんだよ、琴子。らしくねえな」  すぐ目の前、そばに。背が高い彼が寄り添ってきてくれていた。  琴子の頭を大きな手でそっと胸元に引き寄せ、撫でてくれる。 「でもよ。俺のことで、そんな感情的になってくれる琴子、嬉しいわ。びっくりした」  いつもロケットみたいに真っ正面からガバッと抱きついてきて、またたくまに彼の腕の中、彼の手があっという間に琴子の肌に触れているのに……。今日はとても優しい。  だから、琴子もそのままそっと彼の胸に甘えてみる。 「英児さんのなにもかも。ぜんぶ、欲しいの。私」 「ぜんぶ、おまえのものだよ」  そういって、ついに英児が『欲しい』と願った写真を二枚、琴子に差し出してくれた。 「これも、琴子のものだ」  今日は頼もしい兄貴の眼差し。その目をみただけで、琴子はいまでも泣きたくなるぐらい気持ちが溢れてしまう。  やっぱり。いまの英児さんがいちばん素敵。好き……。大好き、愛してる。  言葉にできなくて。彼が抱きしめてくれている胸元から、琴子はそのままつま先をきゅっと立てて、彼の唇にキスをした。 「んっ、琴子……、なんだよ……」
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