◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

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 英児の歯切れ悪い返答。愛子からも、矢野さんからも琴子は聞かされていた。実家に亡き母親のお参りだけはかかさず行くけれど、お茶の一杯だけ飲んでそれだけで帰っていく。だから余計に英児の父親が憤慨して怒る。でも今年はお嫁さんになった琴子にも挨拶が必要だから、英児もさっさと帰るはずはない。そこは琴子さんも、よく見ておいてあげて、あげてくれよ――と、彼を見守ってきた大人達から聞かされている。  話し合ったわけでもなく、琴子は英児のしたいようにさせてみようと見守ることにした。でも、今年は愛子さんが準備した食事をいただく気持ちになったようだった。 「親父は?」 「ああ、琴子さんが来るからって。菜園の野菜をつんでいるよ。もう朝からうるさくてねえ。琴子さんが来るから、来るからって」  それを聞いては英児も知らんぷりは余計にできないと覚悟したようだった。 「父ちゃんのところに行ってくる。畑、だよな」 「そう、だけど……」  途端に、愛子姉さんも不安そうな顔。でも琴子からそれとなくにっこりと返してみる。 「じゃあ、琴子さんを連れて挨拶しておいで。それで、もう家に入るように言ってくれる? 熱中症になると注意するのに聞かないのよ、ずうっと畑仕事をしてきた俺がなるわけないって、もう」 「わかった。行ってくる」  英児と一緒にそのまま玄関先から、本宅の裏へと回る。  裏庭的な、でもわりと広い畑に出た。爽やかな夏風が吹き込んできて、遠くには海が見えた。 「いたいた」  英児が指さしたのは葱坊主のなかで、麦わら帽子だけがひょこひょこ動いているところ。  そのまま英児の後をついて、琴子も麦わら帽子に近づいていく。 「親父。ただいま」
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