◆ ヤンキー君、いらっしゃい☆

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 その声に気が付いた麦わら帽子が止まった。そして葱坊主の中から、老人が現れる。 「おう、きたんか」 「琴子も一緒に来た」 「お義父様、お久しぶりです。本日はお邪魔いたします」  黒いワンピースで楚々と挨拶をすると、麦わら帽子の舅が琴子をひと睨み。琴子はドキッとする。  怖いじゃなくて。英児にそっくり! そう感じたから。 「いらっしゃい。暑い中、ご苦労さん。お父さんのお参りはしたんかね」 「こちらの帰りにさせていただきます。母のところで迎え火をする予定です」 「ほうかね。そりゃ、お母さんもお待ちだろうね」 「こちらのお母様にもご挨拶させてください」 「ありがとね。来てくれて」  にこっと笑いもしないお義父さん。でも、きっとこういう人なんだろうなと琴子は理解した。それが子供だからこそ、親はもっとこうあってほしいと英児も反発したのではないかと。 「父ちゃん。この茄子、うまそうだな。琴子のよ、焼き茄子うまいんだわ」 「ほうかね。それなら持って帰っていきや」 「トマトもうまそうだな。琴子のマリネがうまいんだわ」 「……英児、おまえのろけにきたんか」  笑いもしないロボットのようなお父さんの言葉に、英児が真っ赤になっていた。そして琴子もそんなおくびもなく『うまいうまい、嫁さんのメシ』といってくれるから頬が熱い。 「……いや、ほんとなんだって」 「のろけるなら、母ちゃんの仏前でしろ」  つっけんどんな言い方だけれど。でも琴子ならわかる。仏前でのろけて、母さんに安心してもらえ。そんな意味なんじゃないかと。  それに英児も真っ赤になったきりなにも言わなくなった。でも、言い返しもしない。
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