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マジかよ。くそ、めちゃくちゃタイプの匂いじゃねーかよ。もうちょっと上手く話しかければ良かった。と、思ったが英児は思い改める。ここ数年、女性とは上手く噛み合わず、会話も上手く成立しない。なにを分かり合えば良いのかも判らなくなり、面倒くさくなっていたから。
それに――。自販機からお馴染みの『ピース』を買い、英児はスカイラインに乗り込む。
それに。ああいうきちんとしたOLの姉ちゃんは、俺みたいな薄汚れた男は眼中にない。良くわかっていた。声をかけたところで、嫌な顔をされるんだ――と。
スカイラインの運転席に乗り込み、英児はサイドブレーキに手をかけながら、それでも鼻腔にしっかり残ってしまった彼女の匂いに、独りひっそりときめいている。甘酸っぱい女子の匂いと、鈴蘭のような清々しい色香。
いいな。ああいう女の肌は柔らかくて、あったかそうだな。そう思って惚けながらクラッチを踏み込む。
顔は驚くような美人ではなかったが、可愛らしい目と可愛い唇の大人しそうな子だった。こんな時間に、あんな疲れ切った目元と表情で項垂れて。でもきちんとしている身なり。いい子なんだろうな。一生懸命やって損ばかりしていそうな子だなあ。俺が恋人だったら、こんな夜はいっぱい抱きしめてやるんだけどなあ……。
なんて考えながらも、手と足と身体は慣れきった運転を始めている。いつの間にか発進しているスカイライン。
暗い夜道を帰っていく彼女の背が、フロントに近づいてくる。
彼女のような女の子とベッドで眠れる夜でもあれば……。英児の脳裏、会ったばかりの可愛い彼女をあろうことか裸にしている始末。
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