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【睦言(むつごと)は執務室で】
煌めく金の髪は陽光を撥ねて眩しく輝き、碧く澄んだ瞳はどこまでも冴えわたる知性を湛え、透き通る白い白磁のような肌はその身に一切の穢れを寄せ付けぬほど清らか。
小さく華やかで煌びやかな顔は成人を目前にして大輪の花へと咲き誇らんばかりに輝く。
その少女は、今やあまねく国々の中で間違いなく、最も名を知られた少女であった。
彼女の名は「ネレア・ヘスース・デ・ラ・ロブレド・ファルケ」。
近世ほどの頃において三百余年の歴史を誇り『帝国』を名乗る国家があった。
その国はほんの数年前まで、年老いた名ばかりの皇帝の下で、いがみ合い跳梁跋扈する貴族と、暴徒とほとんど変わらぬ軍隊とが、内乱にもなれぬ内輪もめに明け暮れ続け、荒れに荒れた半端な国土をかろうじて保つだけの弱国に過ぎなかった。
だが、いつからか貴族たちは陰湿な悪意の応酬を止め、向ける首の向きを揃えていく。
時を同じくして、粗暴の徒としか呼べぬはずのものでしかなかった軍人達は規律の取れた戦争道具へと昇華されていく。
そして『帝国』は、見かけ上は皇帝の名のもとに一条の矢となって、帝国を餌にせんと彼らと小競り合いを続けていた周辺諸国へと食らいついていった。
次々と、それはまったく淀みのない足取りで、周囲の4つの小国と、帝国と同程度以上とみなされていた3つの国を僅か3年で飲み込んだ帝国は、多数の民族があい乱れる混沌とした国家となりつつも、政治・経済・軍隊そのいずれにおいても盤石としか言えぬほどの体制を敷き、世界に名だたる大国として、大陸に覇を唱えたのだった。
それを為したのは、曇った眼に王冠を抱いた傀儡たる皇帝その人ではない。
政治の頂点に立ち、経済の要の手綱を握りしめ、軍の唯一司令官たる元帥に忠誠の膝をつかせた者。
それが齢18にも満たぬ少女であるなどと誰が信じることができようか。
誰もが吸い寄せられるほどの美貌を持って麗しく、触れれば折れそうなほどたおやかな肢体は瑞々しく、男であれば一度は彼女をものにせんと欲することを止められぬ信託の乙女とも言うべき清廉とした少女像。
だが彼女の真に恐るべきは、その頭の中にあった。
彼女の容姿が今以外のいずれであったとしても現在へと到達したであろうその成果を生んだのは、全て彼女の内側から発せられたもの。
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