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「鈴木、起きろよ。」
身体が揺さぶられる感覚がして、意識が覚醒していく。
目を開けると、そこにはいつもと変わらない机、黒板、教卓。
そうか、ここは学校だった。
声がした先を見てみると、そこには見慣れぬ姿の女の子が立っていた。
制服はうちのものだが、クラスの子ではない。
わざわざ他のクラスの子が僕になんのようだろうか。
そう思い、尋ねようとしたとき、「どこまで覚えている。」と尋ねてきた。
どこまでとは、何を指しているやら。
まったく思い当たる節がなく、「と、言いますと・・」と、なさけなく聞き返した。
その言葉を聞いた瞬間、彼女は眼を見開いたのち、「全部か。」と呟いた。
更に疑問が出てくる僕を差し置いて、おもむろに彼女は語り始めた。
僕と彼女の関係、そして、僕の身に起きた出来事を。
物語は、3か月前に遡る。
クラスでも一人でいることが多かった僕、鈴木 孝行は、放課後、クラスで読書するのが習慣となっていた。
そのことは何となく、覚えている。
一人でいるのは楽だと思いこませ、無理をして過ごしていた。
少しでも、他の人と話ができるよう、図書室ではなく教室で本を読んでいたのが、その証拠である。
なんとみじめで悲しい高校生活であるや。
それで、そんな時、僕に声をかけてきたくれたのが彼女、高捺 光だったらしい。
「偶々、君が読んでいた本が私の溺愛する著者でね。そこから少しずつ話をするようになったんだ。」
一人でいる僕に話しかけるのはためらいがあっただろう。
そのことを考えると、彼女が優しい性格だと考えられる。
「最初の方は、おどおどしてて可愛かったな。」
前言撤回だ。予想に反して、どキツいナイフをお持ちである。
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