恋だとか 愛だとか

2/7
前へ
/7ページ
次へ
西野(にしの)さんのことは親友だと思ってるから」 ポツリと里村は、そう溢した。 あ。 なんか、泣きそうかも。 ーー親友かぁ。 他の子よりも特別に思っててくれたんだ。 予想外の言葉に頬が弛みそうになったけど。 でも、やっぱり彼女にはなれないのかぁ。 あたしが欲しい特別は、それじゃない。 「西野さんが、どうとかじゃなくて」 ゆっくりと言葉を選ぶように里村は話し出す。 里村は、普段あまり人の名前を呼ばない。 だから、この短時間で2回もあたしを呼んでくれたことが嬉しかった。 ちゃんと向き合ってくれてる気がする。 今だけでも、里村を一人占めしている気がする。 なのに、奥歯をギュッとしていないと、鼻の奥がツンと痛くて、なんだか負けそうだった。 「俺は、恋愛とかそういうのがわからないから。だから、付き合うとかは無理、なんだよ」 「あたしのこと、女として見られないってことだよね?」 「あー、いや……。うーん……」 また斜め下を向いて、何かを考えている。 いっそのこと、もっとはっきり断ってくれれば楽なのに。 変に気を遣っちゃって、里村らしくないんだから。 いつだってマイペースで、周りに馴染みきれない、不思議なところに惹かれたんだ。 それでいて、あたしが困ったり悩んだりしたら、ちょっと斜めの方向から励ましてくれる優しい人だ。 こんなときに、そんなちょっとずれた優しさはいらないんだけどなぁ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加