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「西野さんのことは親友だと思ってるから」
ポツリと里村は、そう溢した。
あ。
なんか、泣きそうかも。
ーー親友かぁ。
他の子よりも特別に思っててくれたんだ。
予想外の言葉に頬が弛みそうになったけど。
でも、やっぱり彼女にはなれないのかぁ。
あたしが欲しい特別は、それじゃない。
「西野さんが、どうとかじゃなくて」
ゆっくりと言葉を選ぶように里村は話し出す。
里村は、普段あまり人の名前を呼ばない。
だから、この短時間で2回もあたしを呼んでくれたことが嬉しかった。
ちゃんと向き合ってくれてる気がする。
今だけでも、里村を一人占めしている気がする。
なのに、奥歯をギュッとしていないと、鼻の奥がツンと痛くて、なんだか負けそうだった。
「俺は、恋愛とかそういうのがわからないから。だから、付き合うとかは無理、なんだよ」
「あたしのこと、女として見られないってことだよね?」
「あー、いや……。うーん……」
また斜め下を向いて、何かを考えている。
いっそのこと、もっとはっきり断ってくれれば楽なのに。
変に気を遣っちゃって、里村らしくないんだから。
いつだってマイペースで、周りに馴染みきれない、不思議なところに惹かれたんだ。
それでいて、あたしが困ったり悩んだりしたら、ちょっと斜めの方向から励ましてくれる優しい人だ。
こんなときに、そんなちょっとずれた優しさはいらないんだけどなぁ。
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