好きな子のためなら何でもできる!なんて事はないんだよ(プールサイド③)

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 テレビの中では、主人公らしい可もなく不可もない普通の青年が、片思いの女の子の窮地にただ見ていることしか出来ていない、もどかしいシーンが流れている。  情けないな。僕なら絶対に助けに行くけれどな。  そう思いながらテレビを見ていたら、主人公のやたらイケメンの友達が、主人公の頬をいきなりビンタして言った。 『好きな子のためなら、何だってできるだろ』  その通りだ。それでこそ男だ、と僕はウンウン頷いていた。  その言葉に何かを感じた主人公の青年は、再び片思いの女の子の方を向き直った。  ここで行かなきゃ、男じゃないだろ。僕が期待を込めて画面に見入っていると、  プツン  テレビの電源が切られた。 「今、すごくいいところだったのに、何で消すんだよ、お母さん」  僕は振り向きざまに、テレビのリモコンを持っているお母さんに食ってかかった。 「何時だと思ってんのよ。明日は転校初日でしょう。早く寝なさい」  時計を見やると、もう二十三時を回っていた。確かにもう寝ないとまずいな。 「もうこんな時間だったんだ。そうだね、もう寝るね。お母さん、おやすみ」  そう言って僕は、紐解きが済んだばかりの自分の部屋に戻って、ベッドに寝転んだ。さっきのドラマの主人公はあの後、片思いの女の子を助けに行ったんだろうな。そんな事を考えながら、いつの間にか僕は眠りに落ちていった。
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