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◆◇◆◇◆◇◆◇
「こちらのお席です」
来た。裕奈ちゃんが来てしまった。いや、来てもらえたのは嬉しいんだけれど、まだ心の準備ができていない。あまりに緊張し過ぎて、一時間前からここに座っているのに、心の準備はまだまだだった。
初デート
心の準備に
あと二年
いや、こんなバカみたいな川柳考えてる場合じゃない。
「はい、ありがとうございます」
去らないでくれ店員、と思いながら、入り口の方を見ると可愛い服装の裕奈ちゃんが立っていた。
「こんにちは」
お互いぎこちない挨拶を交わしてすぐ、テーブルの上を見た彼女は怪訝そうな表情に変わった。
「あの、今日って四人じゃ……」
そりゃあ、気付くよね。だって四人で合コンと言われてきたのに、二人分しか食器がセットされていないんだから。
「実は今日は二人だけ……」
言い訳じみて、掠れ声しか出なかった。
「ごめんなさい、聞こえなくて」
「今日は二人なんです。僕と裕奈ちゃんだけなんです。すいません」
「あの、ちょっとお手洗いに行ってきます」
僕からの返事を聞くや否や、裕奈ちゃんは歩いていってしまった。怒っちゃったかな。そうだよなぁ、結果的に騙したのと一緒だもんなぁ。裕奈ちゃんを待つ間、僕は不安と後悔に包まれていた。
しばらくして、席に戻ってきた裕奈ちゃんはやはりどことなく不機嫌に感じる。
「それで私に伝えたい事って何ですか?ちょっと私、足が痛くて用件聞いたら早くに帰りたいんですけれど」
「足……痛いの。ごめんね。ああ、この靴だと」
裕奈ちゃんの足元を見ると、とても可愛いんだけれど、外反母趾で突出している箇所に圧が掛かりやすそうな靴だ。
「話をしてから渡そうと思ったんだけど、先に渡すね。履いてみて」
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