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僕は急いで持ってきた靴を裕奈ちゃんに渡した。渡された裕奈ちゃんは戸惑っているように見える。履けば少し楽になるかもしれない。
「履いてみて」
裕奈ちゃんが足を入れる。どうだろう、合うかな。心臓がパンクしそうなくらいドキドキしてる。
「あっ、楽……」
裕奈ちゃんが小さな声をあげた。
「どうかな」
「うん。すごく履きやすくて楽」
良かった〜。僕は全身の緊張が緩み、椅子に深くもたれ掛かった。
「なんで、私にピッタリの靴を作れたの?私の足の事、知らないよね」
裕奈ちゃんが捲し立てるように訊いてきた。確かに何で知っているのか不審だよね。
「まる子に聞いたの?」
まる子さんに疑いが掛かってる。それはダメだ。彼女は恩人なんだから。僕がちゃんと話さなきゃ。
「いや違う。昔から知ってた」
そう僕は五年生の時から知ってる。
「僕の事、本当に覚えていない?」
勇気を出してもう一度聞いてみた。裕奈ちゃんは少し考えてから、自信なさげに応えた。
「もしかして、小学校の時の」
「うん。裕奈ちゃんに好きだって告白したのが僕」
「また、私をからかって楽しんでるの」
裕奈ちゃんの目から涙が溢れ出ている。違うんだ、今回もあの時も。ちゃんと、ちゃんと伝えないと。勇気を出さないと。
「あの時は、仲間外れになるのが怖くて。それで……本当にごめん」
裕奈ちゃんの顔を見てちゃんと伝えよう。そして、きちんと振られよう。
「僕、本当に裕奈ちゃんの事が好きで、足の事、自分なりに調べていたんだ」
裕奈ちゃんは俯いたまま、なんとなく話を聞いてくれているようだ。
「そうしたら、裕奈ちゃんの足は外反母趾って言うのに似てて、それで少しでも楽になればって思って裕奈ちゃんの上履きにいろいろと試してみたりして」
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