好きな子のためなら何でもできる!なんて事はないんだよ(プールサイド③)

3/14

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
◆◇◆◇◆◇◆◇  翌朝、僕は担任の先生に連れられて教室に入っていった。 「今日からこのクラスの仲間になる転校生を紹介しますね」  そう言って先生は目で僕に自己紹介を促してきた。 「初めまして。木村悠斗(きむらゆうと)と言います。千葉県から引っ越してきました。プラモデルを作るのが好きです」 「じゃあ、木村君は窓際の一番後ろの席に着いてね。みんな、仲良くしてね。さて、授業を始めましょう」  僕は先生に指示された席にランドセルを置いて、隣の席の女の子の方を向いて声を掛けた。 「あの、僕まだ教科書持ってなくて、見せてもらえないかな」 「あっ、うん」  二人して机をくっ付けて、真ん中に教科書を置いて授業を受けた。  僕の右斜め前に置いてある国語の教科書。だけど、読みやすいなぁと思っていたら、少しだけ僕の方に傾けて、僕が読みやすいようにしてくれている。  優しいなぁ、この子。  彼女の机の上を見ていたら、授業資料のプリントに、五年二組佐々木裕奈(ささきゆうな)と書いてある。  佐々木裕奈ちゃんかぁ。  細くて小さい体つきに、綺麗な二重の目。全体的に可愛いと思うんだけれど、何でかな、纏っている空気は少し重く感じる。  日が経つにつれて、分かってきたことがある。彼女は、ユーマと呼ばれていた。最初はニックネームなのかと思っていたけれど、どうやらバカにしている呼び方らしい。  なんでも、プールの時についた彼女の足跡に指が四本しかなかったから、未確認生物だという事になっていると男友達が教えてくれた。  いや、それってバカにする前に心配しないの? 痛くないのかな。治らないのかな。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加