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裕奈ちゃんは、学校では誰とも話さない。誰も話し掛けない。一日中、席に座って何かを読んだり、ボーッとしたりしている。掃除当番をみんなが裕奈ちゃんに押しつけて帰っても、文句も言わず教室を綺麗に掃除してくれている。教壇のお花にお水をあげているのも裕奈ちゃんだ。
僕は裕奈ちゃんを好きになった。いわゆる、初恋だ。優しい心を持っている裕奈ちゃんが大好きだ。
同じ頃、僕も男子のグループに仲間入りできた。放課後にサッカーをしたり、ドッジボールを楽しんだりと毎日が楽しくなっていた。
大好きな裕奈ちゃんがいて、休み時間や放課後には友達と遊べる。すごく楽しい毎日だった。
ある日、僕は裕奈ちゃんと二人でゴミ捨てに行くことになった。ゴミ捨て場は、校舎の裏の人があまり立ち寄らない場所にある。
「後は、私がやっておくから」
急に裕奈ちゃんに言われた言葉に、僕はビックリした。だって、これからゴミ箱の中を掻き出して、ゴミ捨て場に捨てるという大変な作業がある。
「えっ、だってこれからが大変じゃない」
「手とか服とか汚れちゃうよ。私がゴミ当番の時は、水気のものとか捨てられていることが多いから。だから、私のせいで汚れたら悪くて」
寂しげに笑う裕奈ちゃんが、幼心に突き刺さった。
「裕奈ちゃんの事が好きなんだ」
咄嗟に出てしまった。思わず声に出してしまった。今まで、"裕奈ちゃん"なんて心の中以外で呼んだこともないのに。恥ずかしくって、裕奈ちゃんの顔を見られない。二人して何となく微妙な空気の中、ゴミ捨て作業を行って、そのまま教室に会話もなく戻ったけれど、恥ずかしくってしょうがない僕にはそれがかえってありがたかった。
そして放課後、僕はクラスの男子に囲まれていた。
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