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「お前、なんでユーマなんか好きなの?」
「あっ、お前もユーマなんじゃねぇの」
どうやら、僕が裕奈ちゃんを好きと言っていたところを誰かが見ていたらしい。裕奈ちゃんが可愛い、優しい普通の女の子だって知っているだろうが。僕が裕奈ちゃんを守ってやる、と思った瞬間に僕のすぐ前に顔があった。
「悠斗、お前がユーマの仲間ってんなら俺たちはもうお前の仲間じゃないからな」
クラスのリーダー格の男子が、僕にだけ聞こえるような小さな声で脅してきた。周りに目線を泳がせると、どの目も僕に対して敵意を向けているように感じる。
怖い……
仲間外れになりたくない……
一人は嫌だ……
「ちっ、違うよ。かっ、からかってやったんだよ」
「そうだよな」
「ビックリしたよ。悠斗がユーマの仲間な訳はないよなぁ」
僕の決意は一瞬で崩れ去ってしまった。いつかのテレビドラマの『好きな子のためなら、何だってできるだろ』という台詞が頭の中に繰り返される。僕もそう思っていた。でも現実はそんな事はななかった。好きな子のためでも、できないことはできないんだ。あのウジウジしていた主人公と僕は変わらない、いや僕はそれ以下だ。
ふと裕奈ちゃんと目線が合った。僕は裕奈ちゃんの目を見れなくてすぐに逸らしてしまった。きっと僕を最低な奴と思ってしまっただろう。もう嫌われてしまったに違いない。
僕の初恋は、僕の弱さによって壊滅的に砕け散った。それは、"僕は弱い人間だ"と気付かされた日でもあった。
六年生になり、裕奈ちゃんとは違うクラスになった。中学校の三年間も一度も同じクラスにはなれなかった。それでも、あの日、砕け散っても思いは変わらず、僕はずっと裕奈ちゃんが好きだった。
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