好きな子のためなら何でもできる!なんて事はないんだよ(プールサイド③)

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 そんな時、テレビで外反母趾の特集をしていた。 「これって裕奈ちゃんの足跡と同じだ」  そのテレビの中では、いろいろな治療や工夫で外反母趾の症状を抑えたり、進行を遅らせることができると言っている。  僕はパソコンを開き、インターネットで外反母趾を調べてみた。いろんなページを開く、が難しい。自慢じゃないけれど、僕は頭が良くない。プラモデル作るとか手先の器用さには自信があるけれど、勉強はからっきしだめだ。  そんな時、救世主的なサイトを見つけた。 "外反母趾オンライン相談室"  どうやら、掲示板でやり取りをしてくれる、無料のサイトのようだ。かなり人気のためか、一度質問を掲示板に書き込むと大量に回答や意見が書き込まれていく。無料だから、いい加減なものも多いようで何が正しいのかを結局他のサイトで確認する必要があった。  そして僕は、中学、高校と裕奈ちゃんの上履きを勝手に改良し続けた。僕がやっていると分かると、嫌がられると思ってコッソリとやっていた。これで少しでも足が楽になって、裕奈ちゃんが笑顔になってくれればいいなと思って。  その掲示板の中で、義肢装具士(ぎしそうぐし)という資格を見つけた。外反母趾の状態に合わせた靴も作れるようになる医療系の資格なようだ。頭の悪かった僕にしてみれば、人生で一番脳みそを酷使した。義肢装具士になって、裕奈ちゃんのための靴を作りたい一心で勉強をした。  努力の甲斐もあって入試をパスして、大学に通うようになったある日、僕は心臓が口から飛び出るかと思った。  裕奈ちゃんがいたのだ。同じ大学、僕は神様やら仏様やら、ありとあらゆる神様に感謝をした。  でも、五年生の頃のことがあり、話し掛ける勇気はなかった。そのかわり、一日も早く裕奈ちゃんのための靴を作りたいと思った。
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