好きな子のためなら何でもできる!なんて事はないんだよ(プールサイド③)

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◆◇◆◇◆◇◆◇  えっ 「横橋(よこはし)先生、すぐに靴作る練習とかじゃないんですか」 「ちゃんと医学や工学の知識がないとダメだろう」  なんてこった。せっかく裕奈ちゃんが近くにいるって分かったのに。一日も早く、作ってあげたいのに。 「そんなに落ち込むことか?何か事情でもあるのかい」  項垂れている僕を見て横橋先生が心配して声を掛けてくれた。その優しさに、僕は裕奈ちゃんとのことを話した。どうして、早く靴を作りたいのかを。 「事情はわかったよ。でも、すぐに作れるほど簡単じゃないんだ。合わない装具は、逆に症状を悪化させてしまう。だから、しっかりと基礎から学ばないといけないんだよ。だけど、君の気持ちは分かった。そこで、一つ提案だ」  横橋先生からの提案は、前期テストで学科総合一位を取ること。そのくらいの努力と気持ちの強さがあるなら、試験後に作成を手伝ってくれる、というものだった。  頭も悪く、気弱な僕にはかなりの条件だった。それから僕は受験の時以上に必死に勉強した。講義は一番前の席で受け、講義終わりには先生たちのところに質問しに入り浸った。そして、僕は自分でも信じられないけれど、学科総合一位になれた。  これで裕奈ちゃんの靴を作れる、そう思っていたら、またまた大きな障壁が立ち塞った。  裕奈ちゃん用の靴を作るには、裕奈ちゃんの足型が必要だった。  これは実際に裕奈ちゃんの足で採型をしないといけない。悩んでいたら、横橋先生から事情を聞いたリハビリテーション学を教えてくれた理学療法学科の先生から声を掛けられた。何でも他の学科の学生が友達の外反母趾をどうにかできないかと相談に来ていたらしい。きっとその友達は裕奈ちゃんのことだ。  僕は、その子に連絡を取りたいと願い出ると、山端まゆ子(やまはたまゆこ)さんっていうベ◯マッ◯ス風な大きな女の子だよと教えてくれた。
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