好きな子のためなら何でもできる!なんて事はないんだよ(プールサイド③)

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 そんなザックリとした特徴だけで、探せるのかな、と思っていたけれど、次の日にそれらしきベ◯マッ◯スいや、女の子を発見した。 「すいません。理学療法学科の山端まゆ子さんですよね」 「そうだけど、あんた、誰?」 「ああ、良かった。教わった特徴通りの人で」  本当に言われた通りの女の子だ。ビックリするほど特徴を捉えている。実写版が作成されるなら彼女以上の適役はいないだろう。 「あの、僕、義肢装具学科の木村悠斗っていいます」 「で、何の用?」  あっ、ちょっと怖いな…… 「あの……」  僕は、義肢装具学科の先生にしたのと同じ説明を彼女にもした。そうしたら、 「バカものーーーーーーーっ」  といきなり怒鳴られ、思わずヒッと言ってひっくり返ってしまった。 「お前がちゃんとしてないから、裕奈は闇属性になったんだぞ」 「ごっ、ごめん」 「地獄に落ちてしまえ」  僕のせいで裕奈ちゃんが闇属性になったのか。っていうか闇属性って。その言葉だけでも落ち込んだのに、その後にトドメを刺されて、僕は顔を上げることもできなくなった。 「で、何の用なの」  あれ、話を聞いてくれるのか。 「あっ。あの、僕、裕奈ちゃんの足に合う装具を作れるようになるためにこの学科に入ったんだ。でも、実技ができるのはもっと上の学年からなんだ。だから、必死に勉強して、学科で一番の成績取れたら先生が作るのを手伝ってくれるって言ったから」 「で、あんた、一番になったの?」 「うん。僕、頭悪いから大変だったけれど。それで、山端さんにお願いがあって」  視線だけ彼女に向けると、先程の鋭い顔つきから、とても優しい顔つきに変わっていた。 「まる子でいいよ。太ってるから、まゆ子じゃなくて、まる子」  いや、太ってるからまる子って。いいのかな、それで。 「じゃあ、まる子さん。お願いです。裕奈さんの足の型を僕の代わりに取ってもらえませんか」
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