いとしい君へ

8/8
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「清一郎が大好きだ。あの時も、これから先もずっと大好きだ。それはずっと変わらない。お前とまた出会えて、こうして一緒にいれることが出来て、俺は幸せだよ。俺がずっとお前を想っていたこと、忘れないでくれ」  真っ直ぐに目を見つめながら言うと、清一郎は恥ずかしそうに視線をそらし、一瞬口元を緩め、すぐに引き結んだ。  ふと、ちょっとした悪戯心のようなものが湧いて、俺は「清一郎」と真剣な声音で呼ぶ。こうしたら目を見つめ返すと知っているから。  予想通り見つめ返してきた清一郎の目を見つめ、俺は心の底からの愛を言葉に乗せるように口を開く。 「愛してる」  あの頃抱いた恋が、今これほどの愛おしさに変わっているのだと伝わればいい。どうしたって離せないほど、愛していると伝われば。 「……恥ずかしい奴」  清一郎は心底幸せそうに笑ってくれるから。 「俺は愛情表現を惜しまないんだ」 「今も昔もそういう奴だって知ってるよ。夏より暑い」 「それは褒めてるのか?貶しているのか?」 「褒めてるんだよ」  俺達はあの頃から変わった。かつての友だった清一郎と俺の薬指には、揃いの指輪が輝いている。 「……秀明」 「ん?」 「僕も、同じ気持ちだから」 「ああ。知ってるよ」  これからも、この先も、お前の声が聞こえる距離でこの想いを届けよう。すれ違うことのないように。 「手紙の代わりに毎日言うよ」 「僕は一年に数回くらい言うよ」 「そこは毎日だろう!」  愛してるをこれから先も、何度でも。  いとしい君へ。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!