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友達の話
「これは友達の話なんだけど」
そう切り出されたら、大方そんなのは話してる奴自身の話だ。
そう思いながら、想志は大して好きでもないコーヒーをズッと啜った。目の前で気楽にコーヒーを飲む親友の豊は、にへらと緩んだ顔で“友達の話”を始める。
「友達がさ、俺に聞いてくんだよ。友達から恋人になるにはどーしたらいい?って」
「へえ」
それはなんだ。つまりはあれか。お前に好きなやつがいて、その人と恋人になりたいけどなれなくて困ってると。
妙に胸がムカムカとする気持ちを抑えながら、想志は「それで?」と続きを促す。
「俺も別にそんな恋愛経験豊富なわけじゃないけどさ、脈ありそうなら告白しちゃえよって言ったんだよ」
「……ふぅん」
それはつまり、脈ありそうだから告白するつもりだっていう話か?恋愛経験豊富じゃないんだからひよれよ。
胸のムカムカはイライラに少し変わっていた。ズッと啜ったコーヒーの苦くて飲めないこと。
そんな想志に気づく様子もなく、親友は緩んだ顔でコーヒーをまた一口飲む。
「でさ、脈ありそうなの?って聞いたら、これって脈あるのかな?って逆に聞かれちゃって」
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