お前だけだよ

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お前だけだよ

 出張を終えて帰宅すると、そこには地獄が待っていた。 「あ、いや、違うんだよ」  クズの第一声はそれで、俺はすぐさま俺の家にいた汚いものを一気に全部追い払った。何かビービーギャーギャーと外から聞こえたが、ゴミの言葉はわからない。  家中のひどい臭いを換気しようと窓を開け、ついでに煙草に火を付ける。吸った煙は頭を落ち着かせ、吐いた煙はさっきまでのひどい臭いをかき消した。 「あーあ、最悪」  クズの浮気もこの部屋の空気も俺自身も全部。  火を付けて間もない煙草を灰皿に押し付け、スーツも脱がずにそのまま外へ出る。コンビニで適当に酒を買い込んで、親友の家へと足早に向かった。  そしたらきっといつものように慰めてくれるだろうから。
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