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それから夕方過ぎになって辺りが暗くなって来た頃に、曼の家に居た全員は浴衣姿に着替えると灯籠流しが行われる会場である川岸に揃ってやって来た。土手の上には様々な屋台が並んでおりそれは今年2回目の夏祭りのようで手作りの灯籠を持った浴衣姿の人もたくさん集まっていてとても賑わっていた。
人混みをかき分けながら川の近くまで来るとソラとタイヨウの持っていた灯籠にスタッフのハッピを着たお兄さんがマッチで蝋燭に火を付けてくれた。
「ありがとう!」
ソラとタイヨウがお礼を言うとお兄さんは笑って「どう致しまして。火傷しないようにね」と2人の頭を撫でると次に火を付けてもらうのを待っている子供達のところへ行ってしまった。
「さ、ほらほら私達も灯籠流すわよ〜」
イオリに言われた2人は「うん!」と頷くと、灯籠を持った枝木とハヅキと共に灯籠を流している人達を真似てゆっくり川に自分達の灯籠を流した。
ぽっぽっと柔らかな灯りを乗せてゆっくり流れて行くたくさんの灯籠を見ながら わぁ〜っとソラ達は目を輝せた。
「めっちゃ綺麗っ!」嬉しそうに叫んで両腕を上げたのはタイヨウ。
「本当に美しいですわ〜…私灯籠流しって初めてしましたの、今日参加出来て本当に良かったです」
「あら、そうなの?なら来年も一緒に参加しましょうね」
「はい、ぜひっ!」ハヅキが柔らかく微笑んだ。
「あははっ、枝木のやっぱ妖怪みたい」
不思議なイラストが描かれてるせいでやけに目立つ枝木の灯籠を見てソラが腹を抱えて笑い出した。
他の客達も目の前を流れていく妖怪の灯籠を目を丸くしながら見ながら「妖怪だ!」「やばいの流れてきた!」とびっくりしている。
「そ、そんなに笑わなくても良いじゃないですか!あれでも頑張ったんですよ〜っ」
うわあぁ〜と枝木が泣き出したの「ちょっといちいち泣くんじゃないわよ!」とすかさず取り出したハンカチでイオリは枝木の目元をごしごし拭い始めた。
「だって皆が私の妖怪妖怪って〜!!」
「あー、はいはい」
「うふふ、ミツハさんみたいで可愛らしい妖怪さんの絵ですわ〜」
「ハヅキ、あれは猫だってば!」
「あら、いけないっ。私ったら…」
はっと気付いて手を両手で塞いだ時にはもう遅く、枝木の涙は更に量が増えていて足元に小さな池が出来ていた。
「ごめんなさい、ミツハさんっ」
「良いんれすっ、気にしてましぇんから〜」
「賑やかだな」目の前でわいわい楽しそうにしているソラ達を見ていた男陣が後ろの方でそれを見ながら可笑しそうに笑った。ちなみに呟いたのは早坂だ。
「とりあえず祭りだからな、たまには良いだろ?」と市ヶ谷が言って早坂の肩に腕を回した。
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