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ふわふわ、ふわり 決心する
それはまだ時折冷たい風がぴーぴゅるりと耳や頬を撫ぜる、白梅香る頃。
初東風と呼ぶにはまだひんやりしすぎる風が足の間を吹き抜けて、制服の紺色のスカートの裾を弄び揺らしていく。
巻き上がるそれを慌てて上から抑えて、ふわりは自分で決めたこととはいえ、太ももに鳥肌を立てて泣きべそをかきそうになった。
「てぃあらちゃんのスカート短すぎ! うぐっ! 寒い!!!」
女子高生の中ではすらりと背が高めの姉のてぃあらから借りた制服はびっくりするほど(成長期の男子としては哀しいほどに)身体にぴったりだったが、如何せんスカートが非常に短い。先週など雪がちらついたほど春なお遠い時期に、日頃は温いズボンしかはいたことのない肉付き薄く甘やかされた脚が耐えられるはずもない。
白ハイソックスでできるだけ脚を隠したものの、太もももあらわなこんな短さで、真冬によくも出歩ているなと驚くやらあきれるやら。首に巻いたこれまた借り物のモコモコ白いカシミヤのマフラーに顔を埋めて暖をとったが、セーラー服は上着の裾すら短くてスースーと腹や背にも風を通す。
だがここまで来たからには今更引き返すことはできない。
(狐だって兎だって、同じ動物だ。話し合えばわかるはず。そうだよね? ひいおじいちゃん)
「待ってて、ひいおじいちゃん。僕がお兄さんの尻尾を狐から取り戻してあげる!」
雄々しくそう宣言したふわりは、そのまま神社の赤い鳥居を決意もあらわにくぐっていった。
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