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彼と私は、死別するまでは恋人同士だった。
まあでも、恋人と一口に言ってもデートやキスなんてことはほとんどしたことはない。ただ毎日同じ屋根の下で暮らして、私が料理を作ったり洗濯物を干したりし、彼が平日会社に出勤してお金を稼ぐといった平凡な新人サラリーマンをやっていたという印象だ。だからもう結婚したようなものだった……と言ったら、間違いなのかもしれないけど。
私達が結婚しない理由は、特にこれといったものはなかった。ただ、今のままが楽だからと、お互いがそう思っていたのだと思う。
私は彼を愛していた。でも、いざ結婚しようとなると、今でもきっと一歩踏みとどまってしまうのだと思う。
不安があった。違和感があった。――それでも、愛があった。だから私達は別れずに、あのままでいられたのだ、と今更ながらに感じる。
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