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 彼は腹痛も頭痛も滅多にしないけど、でも何故か微熱になりやすい体質だった。体に異常が起きない発熱。それに気づかないままたまに高熱を出すことだってあったから、そういう時のために、必ず私が毎日この体温計で、彼の体温を測っていた。  日課のようなものだった。だから今でも、それは続けている。  墓を荒らすなんてことを当たり前のようにやってしまった私だけど、よく考えたらそれはいけないことだった、かもしれない。  ナイフで刺された胸元の部分に配慮しながら彼の体をお湯で洗っていた時、ふとそう思った。  ……いやでも、彼がいない生活なんて私には考えがつかない。冷蔵庫に入れている時だって、落ち着かないんだから。  だんだんと腐っていく……というか、もうすでに腐ってしまっている彼が原型を留められなくなるまで、しばらくはこの生活を続けたい。あと、あの通り魔が逮捕されるまで、かな。まあ、そんなことあり得ないんだろうけど。  目撃情報も無し、私がショックで通り魔の特徴を一切覚えておらず、犯人の目処は全くといっていいほどついていなかった。時効、は殺人だからまだなのかもしれない。それが唯一の望みだ。
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