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はじまり
これは私が夜の街で働くことになった話
本来ならキャバ嬢とか、ホステスとかになるのだろうが、私はガール(クラブのボーイの女性版)として働くこととなった
きっかけはいい歳して貯金もほとんどなく、金銭面で親に頼っていた部分があったことと、親には内緒で借金をしていたこと
後者の部分は誰にも言ってないが、貯金がなかったことを会社を経営する従兄弟に相談したところ夜のお店を紹介されたのだ
「ここが俺の知り合いがやってる店」
「私こんなとこで働いたことないんだけど……」
「顔の良さは置いといて、お前愛嬌あるしなんとかなるって」
余計な一言が入っている気もしたが今はそこについて問い詰める時間はない、従兄弟に紹介された店の店長と今から会うことになっているのだ
緊張しながら店へ向かうとそこは私が初めて足を踏み入れる世界が広がっていた
「あ、社長お待ちしておりました」
「今日は時間取ってもらってありがとう」
「いえいえ……そちらの方が?」
「あぁ、俺の従姉妹……まぁ妹みたいなもんだな」
出迎えてくれたのは細身で眼鏡をかけた男性
アイロンがかけられビシッとしたスーツを着こなしている
彼に案内され、店のVIPルームに通された
緊張する私をよそに従兄弟と店長は話し始める
「悪いんだけど、こいつをここで働かせてやってくれないか?」
「お話はオーナーから聞いてます、こちらとしても人手が足りてませんしありがたいお話ですよ」
「こいつ、顔はそこまでだけど愛嬌はあるから」
「ちょ、失礼なこと言わないでよ!」
「はは、社長の紹介ですしこちらは歓迎しますよ」
店長は私を見てニコリと笑った
そして忘れていたと胸ポケットから名刺を取りだし私へと差し出す
名刺には店の名前と、彼の名前が書かれていた
「自己紹介が遅れてすみません。私はこの店の店長を任されている渕上と申します」
そう言って店長─渕上─はぺこりとお辞儀をしてもう一度笑顔を向ける
それにつられるようにして私もお辞儀をした
「ようこそCLUB PEACHへ」
渕上の言葉に、ここから私の物語は始まる、そう思った瞬間だった
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